なんのための日記か
これはひとりアドベントカレンダー「日記ぽい」12日目の記事です。なんのための日記?

「誰が読むのか」については正面から書いた。「日記とは何か」については、日記本を読みながらちょっと探ってみた。 昨日は「そもそも、なんで書きたいんだろう」って書いている。が自分で「記録を読むのが好きだから」とも書いている。
日記を書くひとはなんのために書いているんだろう。それは人によって千差万別だろう。そういう本がないか探してみると、自己啓発本が実に多くて、なるほど日記もそういう道具とされているのか、と認識を新たにする。
阿久悠の「日記力 『日記』を書く生活のすすめ」は、ずっと日記を付けてきた阿久悠が「語り下し」で日記について書いている本だ。以下、引用のページ数は、Amazon Kindle版で表示されているページ数を記載する(紙の本に対応しているはずだが、自分では確認できない)。
第一章から、なんのために書くのか、に関連がありそうなところを引用する。
日記とは、一般に「自画像」を書くものだと認識している人も多いかもしれません。しかし、日記とはこういうものであるという既成概念をどのように排除するか、それがまず大事です。(p.12)
つまり、ぼくの日記は、アンテナが錆びつかないように、磨くための手段でもあるのです。(p.13)
他のみんなと同じ情報に流されるのではなく、日々の生活の中で、自分の日記にしか書けないだろうという物を見つけ出す、それが人間の感性そのものということになっていく。(p.13)
昔は備忘録、忘れないためのメモ帳という役割があったわけですが、二十三年間書き続けてきたことで、今、それだけではない存在になっています。(p.14)
「日記を書く理由」の周辺を漂っていていて、「このために書いている」にはぎりぎりで踏み込まない。
阿久悠の日記は1日1ページを守り、そして黒ペン・赤ペン・オレンジのマーカーを使い分けているとのことだ。ペンの色分け、枠での書き分けは私も昔メモ帳で似たようなことをやっていたが、続けられなかった。
二章は、阿久悠が以下に日記を始めたか、が書かれている。小学校の夏休みの「絵日記」が「朝起きて顔を洗いました」なのが苦痛だったそうだ。
子ども心にも、何とかこの「朝起きて顔を洗いました。ご飯を食べました」というのを抜きに書くことはできないだろうかと考えていました。結果、創作絵日記を書いて大騒ぎになったことがある。多分、その内容が、「今日は誰々の葬式があった」というようなものばかりだったからでしょう。(笑)(p.33)
その後大学生の時にもまた日記を書くようになったが「極端に自分がゆがんで醜く見える鏡を見ながら書いていた」「そしてついには、こんな日記に拘束されて、書けば書くほど沈んでいくような生活をしていても仕方がないと思い、その日記を燃やすという儀式を行うことで、日記と決別しました。」(p.35)とのこと。その後長続きをする日記を再開したきっかけを、このように書いている。
一九八〇年の忘年会で、演出家の鴨下真一さんから、革張りの立派な日記帳をいただいたのがきっかけでした。(p.35)
とにかく、日記が苦手な訳です。でも、鴨下さんの好意に応えるためにも、何とかして書かなくてはならない、とあれこれ思い悩みました。(p.40)
「日記帳をいただいた」ことが、その後ずっと書く日記のきっかけだったとは!
阿久悠の日記は、その日のメモから5つだけテーマを拾い上げる、というルールで、かつその5つに順位を付けている。
一番目に書いたことと、五番目に書いたこととでは、その重みは四倍も違っていることさえあります。それは日記を書いた日の自分の視点を確認することでもある。まさに「自画像」がそこにあるのです。その事実を後で感じることができることが僕にとっては日記の最大の効用です。(p.44)
これもおそらく最初から狙っていたわけではなく、書いていくうちにわかってきた効用なのだろう。その他、この本から日記の効果・効用ととれる部分を引用する。
書くネタは、それこそ日記をひもとけばいくらでも出てくる。(p.75)
長年日記をつけていると、確実に物事を観察する目が養われます。(p.90)
この本はいわゆるハウツー本ではないが、阿久悠が具体的にどう日記を書いているのか、という例が豊富に出ている。が、しかしそれをそのまま真似しても、私には続けられないだろう。なにより、阿久悠はこの本の中で繰り返し書いている。
たかが日記といえど、オリジナリティのある物を書きたいという欲求がありました。(p.40)
十人いれば十人の違う日記の世界ができるはずです。(p.130)
結果的に人と同じようなものになったとしても、最初から人真似を承知で取り組むのだけはやめたほうがいい。(p.132)
でも、読んだ今、影響は避けられない気がしている。基本の日記は、見開き1か月の狭い場所に押し込もうと思っていたのだけど、1ページの日記も別途書きたい気がするが、続かないだろう。日付なしなら書けるかもしれない。