暗号技術入門-秘密の国のアリス 『暗号技術入門』(結城浩)という本を読みました。
現代の暗号技術のなかで重要な6つの技術である対称暗号・公開鍵暗号・一方向ハッシュ関数・メッセージ認証コード・デジタル署名・電子証明書について書かれている本です。非常に分かりやすく平易であり、そしてそれぞれの技術の仕組みだけでなく、互いの関連、その技術でできる事が何かを理解できます。

分かりやすく平易である

文章が平易で読みやすく、適切に図が使われており、そして数学的知識を要求しません。しかしながら説明している範囲では正確さを犠牲にはしていません。どうしても必要なところでは、数学的な概念がわかりやすい言葉と図で丁寧に説明されます。
文章や説明のしかただけでなく、構成も分かりやすいです。各章は次のように構成されています。

  • 喩えなどを使ったとても短い導入部
  • 数行にまとめられた「この章で学ぶこと」
  • 内容
  • 次の章との関連を含む「この章のまとめ」

導入部で説明される内容の性質がわかり、「この章で学ぶこと」で概要が示され、そして「この章のまとめ」ではまとめるだけではなく、次の章との関連も示されています。理解しやすく、本の中で迷子になることもなく、内容があたまに入りやすい構成です。

技術の関連と、技術にできることがわかる

説明されているそれぞれの技術がそれぞれどのような問題を解決するためのもので、どのように関連しあっているのか、何ができて何ができないのかを説明することに力がそそがれています。
この本を通読すると、セキュリティにおいて暗号技術がカバーしている部分の重要性がわかると同時に、その範囲が限られていることも明確にわかります。暗号技術は非常に重要だけれども、「暗号化しているから安心さ」という考え方がどのように危険かというのがはっきりするのです。
セキュリティの知識は、一般のPCユーザにも有用です。この本は技術書ではあるのですが、非常に読みやすい本です。数学的な知識は不要なものの多少数学的な考え方は読む上で必要ですが、技術系・理系でない方にも十分おすすめできる本だと思います。
通読していい本だなあと思った後で、こんなことも思いました。

  • 著者の結城さんは暗号技術について勉強し、理解・消化した上で、この分かりやすい本を生産した
  • 私はその生産物を消費して恩恵をうけている
  • わたしも技術屋として、消費するだけじゃなくて人の役に立つ何かを生産したいなあ