これはひとりアドベントカレンダー「日記ぽい」2日目の記事です。本の感想だけを書いた日記はあり得るのではないか。

先日、ISBbooksで購入したZINE『概念のデザイン』(秋山福生)を読んだ。 前書きにこうある。

エッセイとデザイン論のふた通りの方法で、自分の生活をより良くするための新しい概念の作り方を書いてみました。

最初に読んだときはよく分からなかったが、読み終えたあとは、この短い文はこの本を簡潔に語っていることがわかる。

エッセイの章では著者の「息苦しさ」にまつわるエピソードが語られる。そして、その息苦しさを乗り越え、あるいは折り合いをつけるための考えかたが編み出される(「概念のデザイン」がなされる)。

最初のエッセイでは著者が自分の名前である「福生(ふくお)」にいだいた嫌悪と、それをのりこえるきっかけとなった「恩人」の考え方が語られる。次のエッセイでは死者の名誉毀損を入り口に、著者と家族との軋轢が具体的に描かれる。息苦しくなるが、ここでもやはり折り合いをつけるための概念が提示される。さらに、家事の苦手さを軽減する考え方、10代から繰り返してきた鬱を都度乗り越えた「概念のデザイン」が続く。

こうした切実な実例を示した後に語られるデザイン論は、説得力が強い。デザイン論のパートでも新たな具体例が示されるのも理解に貢献する。

後書きをふくめてわず31ページの本だが、内容は充実している。