ノンアルコール・シフト
最近、ノンアルコールの飲料を試している。単にアルコールが入っていないだけでなく、ビールや酎ハイの代替として飲まれることを意図している飲み物だ。軽い気持ちで試し始めて2週間たった今、アイデンティティの危機というか価値観の転換というか、そういう何かを感じている。
今のところ、アサヒのドライゼロ・ドイツ製のヴェリタスブロイ・サントリーの「のんある晩酌レモンサワー」が好みだ。
ビールの爽快感が欲しい時はアサヒビールのドライゼロが良い。グッと飲むとほぼスーパードライだ。もちろん味の違いは感じるが、体験としてはかなり似ている。
何か食べ物と合わせてここでビールの旨味が欲しいな、という時はドイツの脱アルコールビール・ヴェリタスブロイが良い。国産に多いビール風飲料ではなく、ビールとして製造してからアルコール分を取り除いたものだ。脱アルコールビールには1パーセント未満のアルコール分が残っているものもあるが、これは0.0パーセントと明記してある。アルコールがない分やはり軽く感じる。しかし味はビールそのものだ。
「のんある晩酌レモンサワー」は、レモンサワーの味がする。馬鹿みたいな感想だが、それ以上の言葉が出てこない。アルコールがはいっていないのに蒸留酒が入っているように感じられるのはどういうマジックなのだろうか。
10年以上前にノンアルコールのビール風飲料を試した時は、「こんなものを飲むくらいなら炭酸水やジンジャーエールを飲む」と思っていた。最近でもビール風ならともかく酎ハイ風は意味がわからない、と試しもせずに思っていた。完全に認識が変わった。
こういうのを飲んでいるだけで日々の飲酒欲はほぼ満たされていて、特に頑張ることもなくいつの間にか1週間全くお酒を飲まずに過ごしていた。13日目、ビールとワインを久しぶりに飲んだらあっという間に酔っ払って、冷やしておいた大瓶のビールは出番がなかった。いつもの3分の1以下しか飲んでいない。
お酒が好きだという自己認識をずっと持っていた。しかしこの30年間、私はいったいお酒の何を求めて飲んでいたのだろうと思わざるを得ない。ノンアルコール飲料に代替できないことは間違いなくあると思っているが、お酒でなくてもよかった部分がかなり大きいのではないだろうか。そういう話ではなくて、ノンアルコール飲料を作る技術の進歩がすごいからそれを私がお酒と錯覚できるようになっただけの話かもしれない。よくわからない。
もうしばらく、ノンアルコール飲料中心の生活をしていこうと思う。今のところ酒をやめる気はないが、どうなるかはわからない。