gepub最初のコミット: 5 May 2010

ruby製のEPUBライブラリ・gepubを作りはじめてから、今日でちょうど10年になった。前身も含めると2ヶ月ほど前から開発していたのだが、汎用的なコードを目指してGitHubにコミットした最初のコードが2010年5月5日のこれだ。

10周年に合わせて新機能をとも思っていたが、とても間に合わなかった。せめて、gepubを使っていたプロジェクトを紹介する。思い出せていないものもあるはずなので、適宜指摘していただけるとありがたい。

gepubで作った電子書籍

電書部

gepubはもともと、編集・ライター養成講座 即戦力コース米光クラス第一期の「電書部」の活動として作ったものだった。だから、最初は電書部の本を作るためにバリバリ使っていた。初期の電書部は、対面で電子書籍を販売するけれども物理媒体を手渡すわけではない、という独特なスタイルで活動していた。まだ日本上陸していなかったKindleのようなプラットフォームは利用していない。ということもあり、今手に入る電書部の電子書籍を私は把握できていない。もしご存知の方がいらっしゃってご連絡いただければ、ここに追記して行く。

電子雑誌トルタル

古田靖氏が編集長の電子雑誌。いまのところ、5号まで発刊。直リンクで配り、動画を埋め込みなど、EPUB 3の規格が成立する前からいろいろやっていた。派生の雑誌を含め、今でも古田靖氏によるカナカナ書房サイトの電子雑誌トルタルのカテゴリからたどることができる。ダウンロードもできるはず。

アサガヤデンショ

私を含む阿佐ヶ谷近辺のメンバーによる、団体とも言えない、プロジェクトというには期限もなくいろいろやっていた存在。Webは最近更新していないものの、最低限のメンテナンスはしている。ここからアサガヤデンショで制作したすべての電子書籍にアクセスできる。阿佐ヶ谷住宅物語以外はすべて無料だ。

その他

上述の古田靖さんによる『小麦粉発酵ベーグル指南書』。小麦粉でまず酵母をおこし、それから小麦粉でベーグルを作る本だ。写真もイラストもなくひたすら文章だけなのに、ものすごく飲み込みやすい。やってみたくなる。ただし、酵母を起こすだけで1ヶ月かかるので、それに怯むのだった。

gepubの今後

私自身は最近あまり使っていないのだが、最新のrubyで動くようにメンテナンスはしている。

AsciidoctorプロジェクトのAsciidoctor-EUB3で利用されており、最近は割とPull Requestもくる。ただこの他では、用途は今後そう広がらないだろうなとも思っている。

PDF並に汎用的なリッチテキスト表現手段としてEPUBが普及することを少しだけ期待して、個人が使う道具の部品になると良いなあと思ってgepubを作ってきた。けれど、EPUBは結局そういう立場にはなれなかった。電子書籍の内部フォーマット、せいぜい入稿フォーマットでしかない。個人が電子書籍を作ろうと思ったら、今は例えばでんでんコンバーターがとても良い道具で、gepubみたいな「部品」の出番はほとんどないだろう。

とはいえ、こういうある程度まとまった機能で隅々まで理解しているコードが自分の手元にあり、自由に使えるというのは便利でもある。Asciidoctorでもまだまだ使ってもらえそうだ。だから、当面メンテナンスをやめるつもりはない。10周年に間に合わなかった実装も、いつかになるかはわからないけれども、やっていくつもりだ。