田舎に住むのもいいかもね、と時々妄想するのですが、現実的にはいろいろ大変だという話もききます。はやりのIターンというのも、排斥されて大変なケースもあるがそれは自治体にとってはマイナスな話なので隠されている、なんていうような、あやしい話もききます。
馳星周は、こんなことをいっています。
特別対談:作家 馳 星周さん&穴澤 賢さんに聞く -- 犬の一生 と 犬との暮らし

俺は北海道出身だけど、田舎に家を建てるのはイヤだった。人間関係のわずらわしさがあったり、仕事のことを考えると条件が合わなかったりする。その点、軽井沢は夏の間は人が多くてたまらないけれど、「なんちゃって田舎」感がいいなと思ったんですよ。東京からは車でも電車でも2時間、大き目のスーパーもあって、家電製品も車で30分ほど掛けて隣町に行けば、量販店があって手に入る。別荘地だから、夏以外は人もいなくてわずらわされることがない。

私は東京で生まれてブラジルのサンパウロ(ブラジルで一番おおきな都市)で小学生時代を過ごし、その後もずっと東京から横浜あたりにすんでいます。田舎にすんだこともないし、故郷という意味でも田舎といえる場所はなく、また親戚が極端に少ないので親戚づきあいもなく、田舎ならではの人間関係のわずらわしさのようなものは体験したことがないので、想像するのも難しいです。
だからわたしにとって、「田舎に住むのもいいかもね」という妄想は単なる妄想から一歩もすすみません。利点欠点を考えてみるほど田舎のことを知らないのです。田舎が好きか都会が好きか、ときかれても、きちんと比べようがありません。
今日になって田舎と都会の両方を知るひとたちの意見をいくつか読みました。
田舎は好きだが、それでも東京を選択する。

田舎の特徴的な点をアバウトに表現してみると、「良い意味・悪い意味の双方で世界が狭い」。どこに行っても知り合いがいる。勝手知ったる境遇で生きていく。XさんとこのYちゃんがこないだアレしたらしいよー、というネットワークの密さ。それだけで完結している。

田舎の人は循環する時間という「宗教」を信仰している

私は、中学生の時に一緒にバンドをやっていた友人に「おまえは東京へ行く人間だからな」と言われたことがある。
ギターを弾いて作詞作曲をするくらいには好奇心の強い少年だったその友人は、一方でこの文章にうまく書かれている田舎のしがらみのまっただなかにある家に生まれた人で、その鬱屈とした気持ちを何かの時にそういう言葉で私にぶつけてきた。
(中略)
最後に会った時、地元の大学に進学した彼は、私よりずっとオシャレな、「今風の大学生」をやっていた。すごくいい車で私を駅まで向かえに来てくれて、服も車も単に高いだけでなくけっこう趣味がいいと思った。
彼は、当時の若者らしい最先端の消費生活をしていたけど、それは、彼にとって一時的なものでどこへもつながるものではなく、いずれ「大人」になって捨てるしかないものだったのだ。だからこそ今のうちに満喫しておきたいという気持ちを痛いほど感じた。
(中略)
私の友人は、彼の父親とは全く違う若者時代を送っていたけど、おそらく、今は、彼の父親と全く同じように地元で暮らしていると思う。彼の家は、そうやって「お変わりなく」継続していく。彼の息子(がいるかどうかも知らないけどいたらおそらく)は、ネットやゲームをして、自分の父親の知らない世界で若者時代を過ごしているのかもしれないが、やはりある年齢になったら、父親のいる世界に戻って落ち着くのだろう。

ローレンツアトラクター的な、または、循環する時間

私は300年以上続く田舎の旧家で育った次男坊として、都会に出てきたのですが、どうしても都会の生活に馴染むことが出来ないという違和感をずっと持ち続けています。決して、田舎が好きで好きでたまらないわけではありません。何をやっても周囲の目が光っているような、田舎のネットワークの中に搦め捕られたような生活は好きではありません。それでも、折に触れ「都会的なもの」に対する違和感に耐えきれなくなることがあります。

田舎怖いな。
という冗談はともかく、馳星周氏を含め、ここに引用した方々に共通しているのは「生まれ育った田舎がある」ということです。そういうひとたちには、人生を送る場所として、故郷の田舎を選ぶのか、都会に出るのか、という選択肢があります。自分にはその選択がないのだな、という当たり前のことを、いまさら実感しました。だからといって落ち込んだりするわけではないのですが、しかし故郷としての田舎がないからこそ、わたしがもし田舎で暮らすという選択をするならば慎重に考えないといけないのだろうなと考えました。
東京は好きですし、都会的なものにはそれほど違和感ももっていませんし、やはり田舎には住まずに東京に住み続けようかな、というのが今の考えです。田舎は土地やらなにやらが安いとか、緑が多いとか、地元の食材があるとか、そういうことが魅力なのですが。
都会そだちのひとが田舎にうつって、楽しく暮らしているというような話は時々聞きますが、そうではない話も(いい面も悪い面も含めて)知りたいなとも思います。そういう話ご存じの方いらしたら教えてください。