ヒューメイン・インタフェース―人に優しいシステムへの新たな指針昨日紹介したiPhone用「産経新聞」と「Seadragon」面白いな、そして似ているな、と思っていたところで、zoomin/zoomoutを繰り返すことによって見えてくる世界 - アンカテを読み、ああそうか、この操作はズームイン・ズームアウトだな。と認識したところで、以前読んだ本のことを思い出し、本棚の奥から引っ張り出してきました。
『ヒューメイン・インタフェース』、ユーザインタフェースの考え方に関する、癖は強いが必読の名書です。
この中に、ユーザをうまくナビゲートするユーザインタフェースの考え方として"Zooming Interface Paradigm(ZIP)"と、その実例である"ZoomWorld"が出てきます。以下、ZoomWorldの説明を引用。

ここで解説するZIPはZoomWorldと呼ばれるものであり、終わりのない広大な平面上に配置された、無限の解像度を保持した情報にアクセスする、という考えに基づいています。この平面がZoomWorldです。あなたがアクセスできるすべてのもの、それがあなたのコンピュータ上にあるのか、あなたのコンピュータが接続されているローカル・ネットワーク上にあるのか、インターネットのようなネットワークのネットワーク上にあるのかに関係なく、ZoomWorldのどこかに表示されているのです。
ZoomWorldにおいて、より広い範囲を見るには、より高く、さらに高く上空へと向かい、俯瞰するというイメージを想像すれば良いでしょう。特定の項目を見るには、高度を下げればよいのです。

とても魅力的に感じませんか。この後に実例が続くのですが、それを読んで、ああこのインタフェース使ってみたい、と思った記憶があります。
さて、産経新聞アプリやSeadragonはどうでしょうか。
産経新聞は最大にズームアウトしたときは、紙面の一覧
産経1覧
紙面1面
産経
紙面一部拡大
産経拡大
Seadragonは、機能にもよりますが、例えば写真サムネイルの一覧から、ひとつの写真ズームアップまでが切れ目ありません。
全体がこうで
seadragon_写真1
これをだんだん拡大
seadragon_写真2
だんだん
seadragon_写真3
だんだん(もっと拡大できます)
seadragon_写真4
Seadragonは「継ぎ目が滑らかな拡大」が特徴です。Seadragonでの地図の拡大は、拡大に従って地名表示などが徐々に滑らかに詳細になっていくのが心地よいです。
産経新聞は、使い勝手はたいへんよいですが、 滑らかな拡大ではありません。紙面一覧は完全に別の画面です。紙面の拡大は、クリック一発で三段階に切り替わります。このときの各段階では、最適な解像度のデータを用意しているようで、文字がくっきりみえます。ピンチアウト操作でスムースにすることもできますが、最適な解像度以外ではちょっと文字はよみづらくなります。
と、それぞれ性質は違うものの、Zooming Interface Paradigmの一部を実現していると解釈することもできます。
Seadragonの中のひとたちはZIPを知っていて、それを意識しているのだろうと思います。でも産経新聞アプリのほうは、ZIPやZoomWorldのことは知らずに、でもiPhone上で最適なインタフェースを探してここにたどり着いたのだろうと想像します。iPhoneのアプリケーションは、おおかれ少なかれこれに似た操作のものが多いんですよね。UI部品とデザインガイドにより、自然にそうなっているのだと思います。iPhoneがこうなったのは、ZIPを目指したのでしょうか、それとも小さな画面とタッチパネルいう制約から自然に出てきたものなのでしょうか。
どっちだか分かりませんが、Zoommingなインタフェースは大変ここちよいので、iPhoneにおいてはもっとこれが徹底され、MacOSのほうにも還元されると面白いのではないかと妄想します。ぜんぜん計画が進捗しない、自分でiPhoneアプリ作る計画も、むやみにZooming的インタフェースでやってみようかな。
(といってるだけじゃダメだなあ、実践が伴わないと...)