読書記録: 森博嗣の本
なんか久しぶりに活字がするする入ってくる週間が到来しました。するする、ばりばり。最近は森博嗣の著作を何冊か読んでいます。
森氏のブログMORI LOG ACADEMY(略称MLA)は前から愛読しています。作家としての森氏には興味がありませんでした。
が、MLAを読んでいるうちにこのひとはどうやら只者ではないと遅まきながら気づき、この只者ではないひとが著している小説はどのようなものかを読んでみたくなりました。ご本人は自分の書いた小説を「読む必要がない」といい、しかもほとんど小説は読まないといっています。
『すべてがFになる』
森博嗣氏のデビュー作。デビュー作とは思えないこなれた文章と人物造形。この作品は完成度が高いです。この作品については、いろんなことが語れます。わたしがこの作品についていいたい、大事なことは次の2点だけです。
- 小説として技術的な問題が何にもない。
- 密室殺人に対するあくまでも理知的な姿勢。
1については、わたしは小説の技術についてはド素人なので間違っているかもしれません。しかし、読み物としてひっかかるところは何もありませんでした。それがデビュー作というのが森博嗣おそるべし、です。
一番大事なのは2です。この作品のメイントリック(トリックといっていいのかどうかも疑問ですが)は、全く理系的な知識はいりません。とにかく素直な考え方なんです。しかし、しかし。
これ以上は何も言えません。作中の殺人を成り立たせているもっとも大事なアイデアは、「理系のひとが考えることだからずるいよ」っていうのではないんですよ。
『臨機応答・変問自在』
森氏は大学助教授でもあります。いや、助教授でもあったわけです(いまは退職しているようです)。在職中の講義では、試験は行わず、授業のたびに学生に質問をさせてそれを採点していたそうです。回答は次の授業で配っていたそうな。与えられた問いに答えるよりも、問いそのものをつくりだすほうが常に難しくまたクリエイティブなのは確かですが、それを採点に使っていたのがすごい。と前置きが長くなりましたが。
この本は、学生の1行程度の問いに対して森氏がやはり1行程度で短く回答するという構成です。実際に授業で使われたもののなかからのセレクションだそうです。
げらげら笑いながら読みましたが、正直図書館で読めばいい本です。二回はよまねぇな。でもそれは、ほとんどの「よい新書」にいえることですね。
ひとつ、お気に入りの問答を引用しておきます。
Q. 今回、何故あのような計算問題を出したのですか?
A. 以前の「今週の言葉」で、「貧乏とは、他人に支配されることだ」と書いた。あれをわかってもらうためです。日頃、自分でもうまくコントロールできない頭が、「単位をやろう」といわれただけで、眠気がとんでしまうのは、まさしく貧乏です。
『スカイ・クロラ』
この小説自体に対する評価は現時点では保留ですが、これを読んでわかったことは、森氏はMLAに書いているのとほとんど変わらない文章でこういう架空世界を書いているということです。しかしその文章で構成された架空世界には、森氏本人の匂いはしません。それが、すごい。
SFとして捉えるとこの話は物足りないです。先が知りたい。