ムーミンおもしろいですよ
キッチンタイマーのことを書いたら、写真にうつっていたスナフキンのミィのマグネットのほうが注目されてしまいました。
あんまり意識してなかったけれどムーミン系のモノをいつのまにかいくつか持っています。スナフキンのパウダービーズクッションなんてのもありますよ。ムーミン好きなの? ってきかれると、はい好きですとこたえざるを得ません。
わたしはTVアニメ版がどんなだったかあんまり覚えてないんですが、原作は最近読み直しました。思ったより面白いんですよこれが。童話のはずなんですがほんとに子供向けなのか? と思うようなお話もけっこうあります。
ということでいくつか紹介してみます。
「この世の終わりにおびえるフィリフヨンカ」
『ムーミン谷の仲間たち』は短編集です、どれも面白いんですが、なかでも「この世の終わりにおびえるフィリフヨンカ」は異色です。
この話にはおなじみのムーミンやスナフキンはでてきません。
海辺のむやみにおおきな家にひとりで住むフィリフヨンカと、そこを訪ねてやってくるガフサ夫人だけが登場人物です。
フィリフヨンカはたくさんの細々した物、写真立てとかお茶の道具とか小さな花瓶とかを大事にしていて、そして家をいつも気持ちよくしたいと思っています。でもどうしてもうまくいきません。家は大きすぎて変な色に塗ってある上に陰気です。大きすぎる家の大きすぎる窓にはどんなカーテンをかけてもぴったりきません。花をかざろうにも海辺にはとげだらけの灌木しか生えていないのです。
その上、このフィリフヨンカはなぜか「もうすぐこの世の終わりがくる」と信じているのです。
そこにともだちのガフサ夫人がたずねてきますが、話は全然かみあわず、ふたりとも居心地の悪い思いをしたあげく、言い争いをしてガフサ夫人はでていってしまいます。
ひとりでフィリフヨンカがいらいらしていると、雲行きが怪しくなってきます...。
ここまで書いてみておもいました。いやな話ですね。でも文章全体に漂うちょっと皮肉っぽいユーモアのおかげで、こんな話でも楽しくよめます。この先の、話の結末もなかなかよいのです。子供に読ませると、説明を求められて困るかもしれませんが:)
童話なのに終末
『ムーミン谷の彗星』は彗星が近づいてきて、地球が滅びるかも! という話です。童話っぽくありません。
彗星がいよいよ接近してからからに干上がった海を、ムーミンたちは長い竹馬にのってわたっていきます。このシーンは挿絵が怖い。
むこうには巨大な彗星が見えます。その彗星の強い光で、かつては海の底にあった尖った岩が長い影をひいています。ある岩の上のほうには壊れた巨大な船がひっかかっています。空にはなんだか重たいもやがかかっています。それらを背景に、長い竹馬にのり、長い影をひきずったムーミン一行が小さく影のように描かれています。
文章での描写もなかなかです。
ここには、海草もありません。ねずみ色のどろにおおわれた絶壁が、目の前にきりたっているだけでした。まったくしずまりかえっていて、ぞっとするほどです。そして、とつぜん、底がなくなってしまいました。かげと湯気につつまれた谷の中に、見えなくなっているのです。
とか、
さて、夕方になりました。みんなは、できるだけくっついて、この世のものとは思えないしずけさに、耳をすましていました。なにもかもが、やわらかくぬるぬるしていて、きみょうにしずかでした。
とか。こんな状況でもスノークのおじょうさんはダンスのことを考えています。そして断崖のそばに綺麗な貝殻がおちていると欲しそうにして、スナフキンにたしなめられます。
「スノークのおじょうさん」は、TVアニメ版で古くは「ノンノン」、最近では「フローレン」と呼ばれているのと同じキャラクタですよ。ムーミンに出てくるキャラクタはこんなふうに、種族名とか家族名しかなくて、固有の名前がないのが多いです。ムーミンからしてそもそも種族名ですしね。スノークもたぶん種族名です。スナフキン(種族はムムリク)、ミィ(種族はミムラ、でもなぜかスナフキンとはきょうだい)は数少ない例外です。
スナフキンとミィ
そのスナフキンとミィが行動をともにする話があります。
『ムーミン谷の夏まつり』では、一人旅を愛するスナフキンが、たくさんの子供たちとミィをつれて旅する羽目になります。
森の中で寝ていると、ひとりの子が泣き出して、ほかの子も泣き出して大騒ぎになります。スナフキンはなんとかして、泣きやませようとします。
「おお、よしよし。あばばのばあ、ぷるぷるぷる!」
と、スナフキンがいいました。
だめです。なんのききめもありません。
「この子たちは、あんたのこと、おもしろいと思わないのよ」
と、ちびのミイが説明しました。
「わたしのねえさんみたいにするのがいいわ。なきやまないと、たたきころしちゃうぞ! っていうのよ。そのあとであやまって、キャンデーをやるの」
「そうすりゃ、ききめがあるかい?」
「ないわ」
とちびのミイはいいました
ミィ、すばらしいです:)
こんなことをかいていたらまたムーミン読み直したくなりましたよ
なんだかだらだらと読みにくいのでちょっと手をいれました(2006.9.22 12:24)