宇宙の出てこないSF
もう5月も終わりですね。はやいなー。
歳をとるにつれて時間の流れが速く感じるのは、分母が大きくなるからだ、ってどこかで読んだような。5歳児の1年は人生の1/5だけど、35歳の一年は人生の1/35なわけです。速く過ぎるわけですよ。
というネタをふくらませるとSFになりそうな気がします。そういうSFあるのかな?
それで思い出したのですが、「マトリックス」という映画があります。という映画があります、って書く必要なんてないほど有名ですね。
SF的にみるとマトリックスの道具立ては目新しくなくて、基本的には「現実と区別がつかない、住人も仮想だと思っていない仮想世界」パターンで「その世界は電子的に構成されている」パターンです。それが分かっているひとなら、この映画を一見していろんな設定を読み取れると思います。マトリックスの外で生まれたひとにはインタフェースがないとか、錠剤やら電話に見えるものはマトリックスから離脱したりログアウトしたりするためのコードだけど、マトリックス内で自然に見える形をとっているとか。
てな雑談を会社でしてたら(仕事しろ>自分)、そういうのもSFっていうの? と聞かれました。SFといえば宇宙が出てくるイメージだそうです。
うん、確かに古き良きSFは宇宙だ。でも70年代以降はそうでもないのだ。わたしも詳しいわけじゃないですが。
マトリックス的な、「この世界は本物なのか? 」パターンのSFはたぶんたくさんあるのですが、まずは『ユービック』(P.K.ディック)でしょうか。
『ユービック』の舞台は宇宙とかじゃありません。月とか超能力者は出てきますが。喫茶店で出てきたコーヒーが腐り、クルマがクラッシックカーになっていき、人間までも退行していく現象。その時間退行を食い止める唯一の特効薬「ユービック」。ユービックはさまざまな形であらわれます。退行現象は何なのか。ユービックとはなんで、なぜ効くのか。
読んでいると、じわじわと「この世界は本物なのか?」という作中人物の不安が伝染します。
電子的に構成された仮想世界を扱ったSFはいまや死ぬほどあると思われますが、古典をひとつといえばやはり『ニューロマンサー』(ウィリアム・ギブスン)ですね。いまさら紹介するのもはばかられるほどの古典ですが。なにしろこいつは1984年の作品なんです。20年以上前なんですよね。「マトリックス」という用語はこの作品に既にあらわれています。このほかにも『マトリックス』という映画には、この作品から借りている固有名詞が多いようです。
そして『ニューロマンサー』、黒丸尚氏の訳文がクールなのです。かっこいいのです。引用したいんですがいま手元に本がないのでのちほど。