「こだわり」って言葉があります。今は、ポジティブな意味に使うことが多いですね。「こだわりの一品/逸品」とか、「素材にこだわった一皿」とか。
でも辞書をひくと、いいことなんか書いてありません。goo辞書で「こだわる」を引いてみましょう。

(1)心が何かにとらわれて、自由に考えることができなくなる。気にしなくてもいいようなことを気にする。拘泥する。
「金に―・る人」「済んだことにいつまでも―・るな」
(2)普通は軽視されがちなことにまで好みを主張する。
「ビールの銘柄に―・る」
(以下略)

(2)は、いい意味で使われる「こだわる」と同じ用例ですね。でも「普通は軽視されがちなことにまで」と、否定的な説明です。しかし最近は、悪い意味でつかわれることはあまりなくなったように思います。今後新しい辞書ではよい意味も載るようになっていくことでしょう。
でも、「こだわる」ってなんでしょうか。
いい意味で使われるときも、悪い意味でもつかわれるときも、共通点があります。
それは、選択の幅を狭めている、ということです。嗜好や主義に基づいて、選択を絞っていくことは必ずしも悪いことじゃありません。だから、いい意味に転用されるようになってきたのでしょう。
でもやっぱり選択を狭めていることにかわりはないんですよね。
何かにこだわるのは悪いことじゃないと思ってます。でも、それが「こだわり」であって、選択の幅を狭めていることは意識しておきたいな、と思います。
わたしは、こだわりという言葉をほとんど使いませんが、わたしにとってのこだわりとは、次のようなものです。
まず最初は自分のあたまで考えて、よいと思ったものを選んだりしながら、こだわることに決める。そして、そのモノ・コトにこだわるべきかどうかについて、もう考えなくなる。そうやって、考える負担を軽減している。毎回考えるのは時間もエネルギーもかかります。判断がブレて後悔することもあるかもしれません。この意味で、こだわりをつくりだすことは、役に立つんじゃないかとも思います。
(こだわりを持つがゆえに時間とエネルギーがかかる場合があることは百も承知です。トータルでみると「損」している可能性はあります)
そのこだわりがこだわりであって、昔自分でかんがえて決めたことだということを忘れてしまうこともあります。
昔自分のあたまで考えたつもりだったけど、実はそれは、借り物の意見を自分の意見と勘違いしただけだったこともあります。自分の考え方が変わることもあります。状況がかわることもあります。
そういうときに、こだわりを作り直したり、捨てたりすることを思い出さないとね。